立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨・・・。これらは一年の気候の変化を24通りに区分した二十四節気と呼ばれるもので、現代社会においては日々の暮らしへの影響力はさほど強くはないものの、一年という道のりを進む上での、時々の道しるべ的役割を今でも担っています。
一年を24等分するということは、ほぼ半月の割合で季節に区切りがつくことになりますから、気候の変化を追っていくにはちょうどいいくらいのペースかも知れません。しかしそれをもっと細かく約5日ごとに区切って、一年を72のスパンに分ける考え方もあります。
それが七十二候です。そんなにたくさんあると、逆に体がついていかない感じもしますが、実は二十四節気よりも七十二候の方がより的確に日々の暮らしとマッチしているのです。
七十二候はその名の通り、72もの名称があって、しかも単なる名詞ではなく漢文調の名前になっていますから、全部覚えるのは大変ですが、今は大変便利なものが普及していますから大丈夫です。2021年の七十二候の詳細を一覧にして示しておきますが、それを覚えなくても、必要な時必要に応じてスマホのgoogleアプリを起動させれば事足ります。
なお七十二候は旬の食材とも密接に絡んでいて、それらを使った料理本が多数出版されています。以下の記事を読んで七十二候について見識を広め、刻々と移り行く季節を堪能して下さい。
七十二候とは?
気候の変化に富んだ日本では、それを移り行く季節として感じることができます。一年は寒い冬から始まり、次に暖かい春が到来し、やがて暑い夏がやって来て、そして穏やかな気候の秋となり、再び寒い冬が訪れます。
しかしこの一年の気候の区切りは春夏秋冬だけではありません。四季を細分化した二十四節気は、春夏秋冬をそれぞれ6つ、合計24に区切って、季節のうつろいをより端的にしています。
その24ある節気をさらにそれぞれ3つに区切って、全部で72のフレーズで表現しているのが七十二候です。これを意識すればほぼ5日に一回別の時候が訪れますから、まさに変化に富んだ、飽きのない充実した一年を過ごすことができるのです。
2021年の七十二候一覧
半月に一度訪れる二十四節気までなら季節の移り変わりとしても合点がいくかと思いますが、約5日に一度やってくる気候の変化とは一体どういうものなのでしょう。以下2021年の七十二候の一覧を載せますのでご覧下さい。
分類 | 名称 | 読み方 | 月日 |
---|---|---|---|
67小寒1 | 芹乃栄 | せりすなわちさかう | 1日5日 (火) |
68小寒2 | 水泉動 | しみずあたたかをふくむ | 1日10日 (日) |
69小寒3 | 雉始雊 | きじはじめてなく | 1日15日 (金) |
70大寒1 | 款冬華 | ふきのはなさく | 1日20日 (水) |
71大寒2 | 水沢腹堅 | さわみずこおりつめる | 1日25日 (月) |
72大寒3 | 鶏始乳 | にわとりはじめてとやにつく | 1日30日 (土) |
1立春1 | 東風解凍 | はるかぜこおりをとく | 2日3日 (水) |
2立春2 | 黄鶯睍睆 | うぐいすなく | 2日8日 (月) |
3立春3 | 魚上氷 | うおこおりをいずる | 2日13日 (土) |
4雨水1 | 土脉潤起 | つちのしょううるおいおこる | 2日18日 (木) |
5雨水2 | 草木萌動 | そうもくめばえいずる | 2日28日 (日) |
6雨水3 | 霞始靆 | かすみはじめてたなびく | 2日23日 (火) |
7啓蟄1 | 蟄虫啓戸 | すごもりむしとをひらく | 3日5日 (金) |
8啓蟄2 | 桃始笑 | ももはじめてさく | 3日10日 (水) |
9啓蟄3 | 菜虫化蝶 | なむしちょうとなる | 3日15日 (月) |
10春分1 | 雀始巣 | すずめはじめてすくう | 3日20日 (土) |
11春分2 | 桜始開 | さくらはじめてひらく | 3日25日 (木) |
12春分3 | 雷乃発声 | かみなりすなわちこえをはっす | 3日30日 (火) |
13清明1 | 玄鳥至 | つばめきたる | 4日4日 (日) |
14清明2 | 鴻雁北 | こうがんかえる | 4日10日 (土) |
15清明3 | 虹始見 | にじはじめてあらわる | 4日15日 (木) |
16穀雨1 | 葭始生 | あしはじめてしょうず | 4日20日 (火) |
17穀雨2 | 霜止出苗 | しもやみてなえいづる | 4日25日 (日) |
18穀雨3 | 牡丹華 | ぼたんはなさく | 4日30日 (金) |
19立夏1 | 蛙始鳴 | かわずはじめてなく | 5日5日 (水) |
20立夏2 | 蚯蚓出 | みみずいづる | 5日10日 (月) |
21立夏3 | 竹笋生 | たけのこしょうず | 5日16日 (日) |
22小満1 | 蚕起食桑 | かいこおきてくわをはむ | 5日21日 (金) |
23小満2 | 紅花栄 | べにばなさかう | 5日26日 (水) |
24小満3 | 麦秋至 | むぎのときいたる | 5日31日 (月) |
25芒種1 | 螳螂生 | かまきりしょうず | 6日5日 (土) |
26芒種2 | 腐草為蛍 | くされたるくさほたるとなる | 6日11日 (金) |
27芒種3 | 梅子黄 | うめのみきばむ | 6日16日 (水) |
28夏至1 | 乃東枯 | なつかれくさかるる | 6日21日 (月) |
29夏至2 | 菖蒲華 | あやめはなさく | 6日26日 (土) |
30夏至3 | 半夏生 | はんげしょうず | 7日2日 (金) |
31小暑1 | 温風至 | あつかぜいたる | 7日7日 (水) |
32小暑2 | 蓮始開 | はすはじめてひらく | 7日12日 (月) |
33小暑3 | 鷹乃学習 | たかすなわちわざをなす | 7日17日 (土) |
34大暑1 | 桐始結花 | きりはじめてはなをむすぶ | 7日22日 (木) |
35大暑2 | 土潤溽暑 | つちうるおうてむしあつし | 7日28日 (水) |
36大暑3 | 大雨時行 | たいうときどきにふる | 8日2日 (月) |
37立秋1 | 涼風至 | すづかぜいたる | 8日7日 (土) |
38立秋2 | 寒蝉鳴 | ひぐらしなく | 8日12日 (木) |
39立秋3 | 蒙霧升降 | ふかききりまとう | 8日18日 (水) |
40処暑1 | 綿柎開 | わたのはなしべひらく | 8日23日 (月) |
41処暑2 | 天地始粛 | てんちはじめてさむし | 8日28日 (土) |
42処暑3 | 禾乃登 | こくものすなわちみのる | 9日2日 (木) |
43白露1 | 草露白 | くさのつゆしろし | 9日7日 (火) |
44白露2 | 鶺鴒鳴 | せきれいなく | 9日12日 (日) |
45白露3 | 玄鳥去 | つばめさる | 9日18日 (土) |
46秋分1 | 雷乃収声 | かみなりすなわちこえをおさむ | 9日23日 (木) |
47秋分2 | 蟄虫坏戸 | むしかくれてとをふさぐ | 9日28日 (火) |
48秋分3 | 水始涸 | みずはじめてかる | 10日3日 (日) |
49寒露1 | 鴻雁来 | こうがんきたる | 10日8日 (金) |
50寒露2 | 菊花開 | きくのはなひらく | 10日13日 (水) |
51寒露3 | 蟋蟀在戸 | きりぎりすとにあり | 10日18日 (月) |
52霜降1 | 霜始降 | しもはじめてふる | 10日23日 (土) |
53霜降2 | 霎時施 | こさめときどきふる | 10日28日 (木) |
54霜降3 | 楓蔦黄 | もみじつたきばむ | 11日2日 (火) |
55立冬1 | 山茶始開 | つばきはじめてひらく | 11日7日 (日) |
56立冬2 | 地始凍 | ちはじめてこおる | 11日12日 (金) |
57立冬3 | 金盞香 | きんせんかさく | 11日17日 (水) |
58小雪1 | 虹蔵不見 | にじかくれてみえず | 11日22日 (月) |
59小雪2 | 朔風払葉 | きたかぜこのはをはらう | 11日27日 (土) |
60小雪3 | 橘始黄 | たちばなはじめてきばむ | 12日2日 (木) |
61大雪1 | 閉塞成冬 | そらさむくふゆとなる | 12日7日 (火) |
62大雪2 | 熊蟄穴 | くまあなにこもる | 12日12日 (日) |
63大雪3 | 鱖魚群 | さけのうおむらがる | 12日17日 (金) |
64冬至1 | 乃東生 | なつかれくさしょうず | 12日22日 (水) |
65冬至2 | 麋角解 | おおしかのつのおつる | 12日26日 (日) |
66冬至3 | 雪下出麦 | ゆきわたりてむぎのびる | 12日31日 (金) |
二十四節気までなら覚えるのにそれほど苦労はしないでしょうが、さすがに72もある名称は、簡単には頭に入りませんよね。名前の付け方もまた漢文のようで難しいですしね。
だから七十二候を個々に覚える必要はありません。覚えなくても今はいいものがあります。
カレンダーやgoogleアプリで確認
家にカレンダーを置いたり貼ったりしている人は大勢いると思いますが、ちょっと情報の多いカレンダーならば、二十四節気はもちろんのこと、七十二候までも網羅しているものもあります。外出したとしても、手帳を持って歩く習慣のある人ならば、手帳のカレンダーに書いてある場合も多いかと思います。
そして手帳など持ち歩いていなくても、スマホなら肌身離さず持っているという人も多いかと思います。今やスマホの普及率は、世帯ベースで8割近くある時代ですから、たいていの人はスマホを持っているはずです。
そしてそのスマホを、単に通信手段としてのみ使用している人は少ないと思います。スマホは本当に便利であり、好みに応じてアプリをインストールすれば、他には何も持ち合わせる必要がないくらい万能な道具となります。
googleアプリには今や何でも揃っていて、カレンダーなどというものも多種多様用意されています。二十四節気や七十二候がきちんと掲載されているカレンダーも何種類かありますので、二十四節気はともかく、七十二候などはいちいち覚えなくとも必要に応じてスマホをチェックすれば、それで用が足りるということです。
四季折々の旬を楽しむ
二十四節気は一年の気候の変化を24区分したもの、七十二候は同じく72区分したもので、どちらも古代中国で考案されたものを、日本では平安時代になってから暦に取り入れるようになりました。二十四節気がそのまま使われ続けたのに対して、七十二候はより日本の気候に合わせるために改訂されてきました。
ですから約5日ごとに季節が変わる七十二候よりも、半月に一回のペースの二十四節気の方が、体は順応しやすいような気もしますが、実は頻繁に季節が変わってせわしない感じのする七十二候の方が、体は納得するのです。なぜならば二十四節気では、日本での実際の季節感とは少なからず隔たりがあるからです。
この七十二候の、72変化の季節感をまさに味わうために、それぞれの旬の食材を活かした料理のレシピ本がたくさん販売されています。72種類もの献立を別の食材を使って考え出すのはすごいことではありますが、考えてみれば一年は365日あって、普通は皆さん毎日1回以上は食事をするでしょうから、料理の専門家が七十二候にかこつけて、わずか72通りのメニューだけで料理本を出せるのなら、実は大したことではないのかも知れませんね。
この記事のまとめ
- 七十二候とは二十四節気それぞれをさらに3等分して、一年の気候の変化を72種類に区分したものである。
- 2021年の七十二候の詳細については、一覧に示した通りである。
- 二十四節気に比べて七十二候のそれぞれの名称はやや複雑であり、数も多いので覚える必要はない。
- スマホを持ち歩いていれば、googleアプリのカレンダーでいつでも七十二候を確認できる。
- 72変化の季節感を利用して、旬の食材を使った料理のレシピ本が数多く出版されている。
四季があって二十四節気があって、そして七十二候があり、これら全てでちょうど100個になって、そのキリのいい数字に根拠もなく納得してしまいそうですけど、実はこれで終わりではありません。暦の上で季節を表すものとしては、他に五節句の5つと雑節の9つがあります。
しかもこのふたつは一年を等分に振り分けているものではありませんので、二十四節気や七十二候とはまた毛色の違う季節の表現となります。暦の達人と自称するのは、これらをすべて理解してからにした方が宜しいでしょう。