啓蟄も春分も二十四節気のひとつであり、各節気とは季節の移り目を表す瞬間であったり、移り変わるその日であったり、あるいは次の季節までの移ろいの期間のことです。
啓蟄には少し見慣れない漢字があてがわれていますが、まずはその漢字の意味を知ることが重要です。それから二十四節気には二至二分と言われる2つずつの「至」と「分」があるのですが、春分は二十四節気の一番初めの二至二分のひとつであり、2つの「分」のうちの初めのひとつです。
ではその啓蟄や春分というのはいつなのでしょうか。2021年のそれらの期間は、具体的にいつからいつまでなのでしょうか。
啓蟄は二月節、春分は二月中とも呼ばれたりしますので、2月にあるような気もしますが、実際のところを細かく見ていきましょう。
啓蟄・春分とは?
一年の気候の変化を24等分した二十四節気の、3番目と4番目に区分されているのが啓蟄と春分です。二十四節気については別途詳細な記事を用意してありますので、どうかそちらをご参照下さい。
啓蟄の読み方は「けいちつ」、そして春分の読み方は「しゅんぶん」です。それぞれそういった季節の名称なのですが、漢字の組み合わせを眺めていても、どういった気候なのか何となく分かりそうで分からないかも知れません。
2021年の啓蟄と春分
2021年の啓蟄は3月5日金曜日から3月19日金曜日までの15日間、春分は3月20日土曜日から4月3日土曜日までのやはり15日間となります。期間としては啓蟄も春分も同じに見えます。
しかし本当のところは、両者の間には長短の違いがあります。果たしてそれはどういうことなのでしょう。
二十四節気は太陽の動きを基に等分して割り出していて、啓蟄が訪れるのは正確に言えば3月5日17時54分、同様に春分は3月20日18時37分であり、それぞれ差し掛かったその日を啓蟄または春分と呼ぶ場合もありますし、天文学的にはそれぞれの瞬間を指します。
そしてさらにその次の清明の位置に太陽が訪れるのは4月4日22時35分ですから、二十四節気が日を指すならば、4月4日は清明であり、春分は4月3日までということになります。
だから啓蟄も春分も同じ長さと思ってしまうのです。確かに日数で計算すれば決して錯覚ではなく、紛れもない事実です。しかし時間で計算すればどうなるでしょう。
答は啓蟄の360時間43分に対して、春分は363時間58分となり、実際は啓蟄の方が短いことが分かります。その差は3時間以上という結構な長さですからちょっと驚いたりします。
3月なのになぜ2月?
二十四節気は12の節(節気)と12の中(中気)に分かれます。奇数回目が節、偶数回目が中です。
3番目の節気である啓蟄は節であり、4番目の節気である春分は中です。そこで啓蟄の別名を二月節と言い、春分を二月中と言います。
ところが啓蟄も春分も、3月に始まる節気です。3月なのに二月と名乗るとは、一体どういうことでしょう。
わが国では明治5(1872)年まで、太陰太陽暦に基づく旧暦を使用していました。啓蟄と春分は旧暦2月に該当するため、この名が付いているのです。
啓蟄・春分という節気の意味
二十四節気は平安時代の頃より用いられるようになりましたが、元をただせば紀元前の古代中国で考案されたものです。ですから各節気の名称が意味するところは、日本で実際に体感する気候の表現に当てはめるには、多少のズレを感じる場合があるかも知れません。
しかし各節気は一日だけのことではなく、次の節気の前日までの期間でもありますから、それなりの長い目で見れば、あながち見当違いというわけでもなさそうです。
啓蟄の「啓」は開くことを、「蟄」は土の中で冬ごもりしていた虫を表す漢字で、大地が温まって冬ごもりから目覚めた虫が、土中から地表に穴を開けて顔を出すという意味です。生き物が再び活動し始める様を、的確に表現しているのに気付かされます。
二至二分のひとつである春分は、他と比べてより天文学的意味合いが強い節気です。春分点が来る日は昼夜の長さがほぼ同じになる日で、この日を境に陽が延びていき、より一層春めいていきます。
この記事のまとめ
- 啓蟄は二十四節気の3番目、春分は同じく4番目である。
- 各節気は瞬間点を指したりその瞬間点のある一日を指したり、あるいはいつからいつまでという期間を指したりする。
- 2021年の啓蟄が始まる日は3月5日、春分が始まる日は3月20日である。
- 啓蟄は二月節、春分は二月中とも呼ばれる。
- 啓蟄は生き物が再び活動し始める程暖かくなり出す頃を意味し、春分は昼夜の長さが逆転する境となってより一層春めいていく頃を意味する。
啓蟄も春分も春に属しますが、春という期間を単純に春とだけ認識していては少々淡白過ぎるのではないでしょうか。春の中にも細かな気候の変化があるのです。
春の節気は立春から始まり、次に雨水が来て、それから本記事で紹介した啓蟄と春分になり、さらに清明そして穀雨と続いていきます。このことを理解すれば、躍動感に包まれた春の躍動感の度合いの違いが分かって、きっと楽しい春を過ごせることでしょう。